さまざまな理由で、借りたお金が返せなくなってしまった場合、次に取る対策には、どんな選択肢があるのでしょう?
法律や専門家の力を借りて、借りたお金を清算する方法が、「債務整理」です。
「債務整理」は、今まで一生懸命やってきたけど返せなくなってしまったあなたを助けてくれます。「債務整理」で新たな一歩を踏み出しましょう。
債務整理の手続き
債務整理の手続きには、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4種類があります。
専門家の手を借りて債務整理を行いたいときは、弁護士か司法書士のどちらかに依頼することができます。
司法書士は個別の借金(もしくは過払金)額が140万円以下の案件のみ、弁護士は金額の制限なしで全ての案件に対応してくれます。
どういう方法を取ればいいのか分からない段階でも「借金を整理したいのですが」と相談すれば、一緒に検討してくれるはずです。まずは気軽に相談してみましょう。
債務整理を依頼し、受任してもらえることになったら、まず最初に、債権者(お金を貸している人や会社)へ「受任通知」という書面を送り、請求を全てストップしてくれます。
債権者からの請求が止まれば、精神的にかなり楽になるはずです。
それと並行して借金の全容を把握し、家計の収支を見直すとともに、返済できるのかできないのかを検討します。できるなら、どうやって払っていくか計画を立てます。できないなら、破産などの法的手続を行います。
債務整理の種類
債務整理の4種類の違いは、借金の深刻さの違いです。
1.任意整理
自分で債権者(お金を貸している側の人や会社)に、「返せなくなったので待って下さい」と交渉することも私的整理の1つですが、それ自体勇気がいりますし、断られてしまう可能性もあります。また、借入先の件数が多いと管理が大変です。
弁護士か司法書士が代わりに交渉することで、利息や遅延損害金などをカットしてもらえたり、1回の返済額を減額してもらうことができ、無理なく支払える範囲の返済額に納めることができます。
また、利息制限法に基づく引き直し計算を行うことで、借金の総額が大幅に減ったり、逆に過払金が返ってくるパターンもあり得ます。
2.特定調停
借金の返済ができなくなりそうな人が、地域の簡易裁判所に申し立てをし、裁判所に仲介してもらって、債権者に返済の軽減を働きかける方法です。
任意整理では応じてもらえそうにない債権者にも、裁判所が間に入っているので、公平な和解を働きかけてくれます。
しかし、必ずしも応じてくれるとは限りませんので、調停が長引く可能性がありますし、不調に終わる場合もあります。
また、裁判所で行われる調停に毎回出席し、自分で債権者と交渉をしなければいけません。
他の3つは司法書士・弁護士に手続をお任せすることができますが、特定調停はそれができないデメリットがあります。
ただし、司法書士や弁護士に払う費用は他の手続きに比べると少なくて済みます。
3.個人民事再生
任意整理と自己破産の中間の手続といえます。
個人で民事再生を行う場合には、借金は大幅に減額したいけど家を手放したくない場合と、借金の理由がギャンブルなどで破産しても「免責」してもらえなさそうな場合があります。
3~5年かけて借金の一部を返済することで残りをカットしてもらう制度です。
4.自己破産
裁判所を通して、法的に、「返せないほどたくさんの借金がある(破産状態である)」ことを確認し、「財産がないので今後の支払いを免除する(免責)」という二つの手続を1つにまとめたものが「自己破産」です。
ここでいうたくさんの借金とは、その人にとってたくさんであれば、手続が可能です。
そのため、1億円以上の借金があっても問題なく完済できるものならば破産状態ではないし、100万円の借金でもその人にとって返せないと認められれば破産状態なのです。
自己破産手続をすると、家、車、保険、預金などの財産を持っている場合、基本的には手放すことになりますが、破産手続後の収入は自分のものになります。
また、当面の生活費は残すことができる(裁判所で金額が決まっています)ので、明日の食費に困るほど全部むしり取られる、ということではありませんから安心して下さい。
債務整理の成功のポイント
1.過去に完済した借金も、個人からの借金も、全部リストアップする
カードローン、クレジット(キャッシング、ショッピング全て)、消費者金融、個人からの借り入れ、過去に完済した借金、途中で返済をやめてしまい完済していないけど何の連絡もないから放ってある借金も、代金を払わずに放ってある携帯電話料金も、これは違うかな?と思うものも、全部リストアップすることが成功のカギです。
カードローンや個人からの借り入れは減額できそうにないから言わないでおこう、と横においたせいで、返済計画を立てる時に入れ忘れててしまい、いざ支払を始めるとつまずいてしまった。
後から忘れていた借金が出てきて、一緒にリストアップしてあれば過払い金で清算できたのに、残ったものだけを後で分割払いをするはめになり、それを返すためにまた借金が増えてしまった。
過去に消費者金融からの借入を完済しており、過払い金が請求できたのに言わなかったせいで時効になってしまった。
というふうに、全部を言わなかったために失敗することは非常に多いです。
2.受任通知を出してから返済が始まるまでの数ヶ月間を利用し、貯金をしておく
弁護士や司法書士に依頼し、全ての借金を一旦ストップさせている間に、借金の返済以外にいくら生活費がかかるのかを把握しましょう。
今後は借り入れナシで返済していくことになりますので、漠然とした計画は失敗のもとです。
また、返済が始まる(もしくは破産手続をする)までのタイムラグを利用して、不測の事態に備えての貯蓄をしておくことが、今後の生活再建のポイントになります。
3.ウソをついたり、隠し事をしない
借金の原因など隠し事をしたまま破産手続を行った場合、ウソがばれたら免責をもらえない可能性があります。
1つウソをつくと、他の事柄についても信用性が疑われてしまいます。
借金が増えてしまったことは恥ずかしいことではありません。任意整理の場合も弁護士や司法書士との信頼関係がカギとなりますので、全てを正直に話しましょう。
4.丸投げにせず、主体的に関わる
弁護士や司法書士に依頼したからといって、丸投げではいけません。せっかく破産申立をしたのに、音信不通になってしまうと免責決定がもらえない場合があります。
自分の借金は自分で清算するんだ、という意思を持って主体的に関わりましょう。