私は還暦を前に85歳の母を亡くし、その1年後に母の遺品を整理しました。
遺品を整理しながら「人は誰しも遅いか早いか死んでいくものなんだ」と死を受け止めることができました。
母は着物を好み、常に着物を着ていたので、その数は半端ではなく、着物と帯を合わせて100点以上ありました。
母は父を65歳で亡くしてから自宅で和裁を教えたり、頼まれものを縫ってひとりで生計を立てていました。
着物を買い取ってもらおうと思ったきっかけ
「着物は財産だから私が亡くなったら売りなさいよ」が口癖の母でした。
一周忌も過ぎ、いらないものを整理をするために不用品回収業者に依頼をしょうと思ったのですが、母の言葉が頭の隅に残っていたので、少し前に友人にも勧められた業者さんにお願いすることにしました。
査定だけでも無料ということだったのでお願いしたのですが、その時の電話で
「着物のサイズが小さいものが多いが反物や帯もあります。」と伝えると、
「小さすぎる着物は需要が少ないんですよ。でも帯や和風小物があるなら伺います。」と言われたので、査定のみをお願いしました。
母の着物は小さすぎてほとんど値がつかなかった
母は150㎝にも満たない小柄な人でした。娘の私は160cm以上あるため、着丈も裄丈も合わず遺品を着ることもできずに買取業者さんに査定をお願いしたわけですが、やはり小さいものは需要が少ないといわれました。
しかし、帯は思っていたよりも査定価格が高く、ほとんど着用していない西陣織の帯が1本1万円~2万円の値段が付きました。
また、名古屋帯が以外にも高値がつき、7,000円~8,000円の査定価格がついたのは驚きでした。
理由は、帯の柄が洒落ていて今の若い人好みだからと言われました。
改めて見てみると、季節ごとに楽しい図柄でした。中でもこれは確かに若い人好みだなと思ったのはお太鼓柄にワイングラスが描かれていたり、サンタクロースが描かれているものでした。
着物査定士の方は、ボジョレーヌーボー解禁のときの女子会やデートにこんな帯をつけると、きっと話題になるでしょうといっていました。
また、サンタクロースの帯はストーリー性があるので、着物を着ない人もタペストリーとして楽しめると言われました。
私が持っていても宝の持ち腐れになり兼ねないので、高値がついたものだけ、その場で買い取ってもらうことにしました。
「今日は査定だけで後日買取りで結構ですよ」と言われたのですが、帯を10本(西陣帯3本、名古屋帯7本)で10万円で買い取ってもらいました。
小さすぎる着物は買い取ってもらえないの?
私の住む街には比較的たくさんのリサイクル着物店があります。
電話で事情を話すと、その中のお店の一店から
「着物を洋服にする作家さんや業者さんと取引があり特別のルートがあるので、ぜひとも検討してください」
と言われました。
「京都や奈良はいいもんが出ますから店頭に吊っておくと旅行客が買ってくれます。」
「小さい着物も外人さんはガウン代わりにすると買っていきますよ。」
と言ってくれました。
例え数百円の買取価格でも捨てるのは忍びないのと、母の着物が外国に渡りガウンとして来てもらえるなんて夢があると思い、引き取りに来てもらいました。
着物としての価値はないと言われていたのですが、リメイク素材としては価値があったようで、20数枚をまとめて2万円で引き取ってもらいました。
高価格とは言えませんが、どちらにせよ今後着ることもない着物だったので、母の着物を全く知らない人がジャケットやスカートにして、おしゃれを楽しんでもらえるなら私も嬉しいし、母だって天国で喜んでくれているだろうと思いました。
着物や帯を買い取ってもらう時は業者を使い分けてもいいかも
遺品などで着物や帯をたくさん買い取ってもらう際には、業者を使い分けて買い取ってもらったのが結果的には良かったようです。
たいした値段はつかないだろうと、一切合切を総合リサイクルショップなどに買い取ってもらうと、着物専門の査定士がいないことも多く、正しく査定をしてもらえないこともあるようです。
着物買取専門店に訪問買取りや宅配買取りで、サイズなどの理由から買い取ってもらえない場合は、リメイク材料として引き取ってくれるお店もあります。(近くにないと探すのは難しいと思いますが…)
晩年和裁をしていたこともあって、小さい布切れもたくさんあったのですが、時々手芸材料を買っていた駅前の小さな手芸屋さんがまとめて引き取ってくれました。
お金は結構ですといったら素敵な布製のペンダントをプレゼントしてくれました。
買い取りが出来ないと断られたとしても、意外と買い取ってもらえる業者や、引き取って貰える店舗もあるので、諦めずにいくつか回ってみた方が良いと思います。
まとめ
当初、母が大事にしていた着物を処分するのは罪悪感を感じていたのですが、行き先を考えながら買い取ってもらううち、人と人とのコミュニケーションも生まれました。
「着物に係わって仕事をしている人は、本質的に着物が好きな人なんだなぁ」と、つくづく感じることができました。
母の着物を手放すと、喪失感を感じるだろうと思っていましたが、意外と晴れ晴れとした気持でした。
手元に3枚の着物と1本の帯を残し、2枚の着物を見よう見まねで1枚の着物に仕上げ、残りの1枚でワンピースを縫いました。
こちらは、私が教えて貰って利用した業者さんです。
査定士さんがとても親切な方だったので良かったです。